題名:アリストテレス はじめての形而上学e0158454_18595402.jpg
著者:富松保文

出版年:2012年
出版社:NHK出版

アリストテレス関連のことを調べなくてはいけなく、
アリストテレスの膨大な範囲に及ぶ理論の概要を知ろうと思って手にした本。

私が知りたかった分野(動物発生論)には触れられていなかったけれど、
私が苦手な分野(数学的なこと)が分かり易く説明されていて、
興味深く読んだ。

こんなに薄い本だけれど、質が良くて、
お得感満載だと思う。


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# by sakonia73livre | 2018-05-19 19:01 | 西洋哲学

題名:戦争は女の顔をしていないe0158454_18423249.jpg
著者:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(訳:三浦 みどり)

出版年:2016年
出版社:岩波書店

ソ連では、女性が、前線で、狙撃兵も含む様々な役割を担った。
それも、民間人である女性が志願して兵隊の一員となった。
初めは、「女性だから足手まとい」、「女性が前線に立つなんて恥」と言われたが、
兵士としての実力を見せ、活躍した。

戦争中は、同志として一緒に戦った男性と女性の兵士。
女性は命を厭わず、男性と同じように敵を殺したし、
男性は、「やはり男性」として女性兵士を守った。
しかし、終戦を迎えると、
それら元女性兵士は、女性性を欠いた女性として元男性兵士に扱われ、
戦場に行かなかった女性からは、「戦場に言った売女」と罵られ、
辛い目に合う。

この本には、
第二次世界大戦の前、戦時中、戦後をそれぞれの形で生きた、
(多くは実際に戦場で命をかけた)女性の生の声が詰まっている。

電車での移動中に読んだのだけれど、
涙をこらえるのが大変だった。

戦勝国であっても、こんなに大変だったのだ。
ソ連に対して悪いイメージをもっていたけれど、捕虜になったナチスドイツ兵を看病したりパンを与えたり、
一般市民は冷血漢では決してないのだ。
それに引き換え、ナチスドイツは何て酷いんだ。
…などなど、これまでとは違った考えで読んだことも付け加えたい。

私が知らないだけだとは思うけれど、
日本の戦争の記録も、本書のように、「一般市民」の声で記録されていることを望む。


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# by sakonia73livre | 2018-05-19 18:43 | 文学

題名:ボタン穴から見た戦争――白ロシアの子供たちの証言e0158454_22501538.jpg
著者:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ (訳:三浦 みどり)
出版年:2016年
出版社:岩波書店

Alexievich, Svetlana. 1985. The Last Witnesses: A Hundred Unchildlike Lullabies

著者の『セカンドハンドの時代』を読んで感銘を受け、
著者の本は可能な限り読みたいと思った。
この本が2冊目。

第二次世界大戦、特にドイツのナチによるドイツ侵攻に、子どもたちがどう向き合ったのかが書かれている。
生まれたばかりだった人の証言もある。
著者も冒頭で述べているように、幼過ぎて何も覚えていないのではないかと訝しく思ったが、
時系列的に、論理的に出来事を追わず、
恐怖や悲哀などの感情で戦争を捉えていた分、
その証言は悲痛なものだし、心を揺さぶられた。
淡々と語っているから余計に。

各章は次のように展開する。
  • 初めに
  • 1941年6月22日
  • ドイツ軍の下で
  • 疎開の日々
  • 孤児たち
  • 少年兵
  • ただ記憶の中で
  • 戦争が終わって

戦勝国のソ連も、庶民はこんなに悲惨な経験をしたのだ。
戦争は全力で避けるべきものだと改めて感じた。

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# by sakonia73livre | 2018-05-04 22:51 | 文学

題名:テロルの時代と哲学の使命e0158454_18311126.jpg
著者:ハーバーマス,ユルゲンデリダ,ジャック、ボッラドリ,ジョヴァンナ (訳:藤本 一勇沢里 岳史)
出版年:2004年
出版社:岩波書店

2001年9月11日。
「9.11 (セプテンバー・イレブン)」とその後呼ばれるテロが起きた日。
その数か月後に、ハーバーマスとデリダが哲学者として、ヨーロッパ人として、
「9.11」に向き合っているかについて語った。

両者の分析は、17年経った今も、目から鱗なものばかりだ。
その当時、彼らが「今後」として扱っていた17年間が経ってみて、
彼らが想像していた通りに、その多くは負のシナリオなのだが、
出来事が展開してしたことに、彼らの眼差しの深さを再認識する。

ハーバーマスは、彼自身がどのように9.11を目撃したのかなどにも触れ、読み易い。
翻訳者が上手いのかもしれない。

デリダに関しては、通常、彼の論理展開…というより言い回しについていけず、
なかなか理解できずに苦労するのだが、
インタビューに定評があるらしいボッラドリのお陰で、今回はそのような苦労がなかった。

ボッラドリの部分が2人の哲学者の語ったことのまとめと注釈になっているので、
時間がない人はその章だけ押さえればいいのかもしれない。

哲学が巷では流行っているらしい。
人々が哲学を求めている。
ポストモダニズムで息を止められたかのように思われた哲学の復活は、
考えても答えがでないような問題が、喫緊の課題として現れている証拠なのかもしれない。

真の意味で、コスモポリタニズムの創成に至るだろうか。
(っと17年前に提唱され、その反対の方向に足を進めている現状に凹みつつ、希望は捨てず。)

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# by sakonia73livre | 2018-05-01 18:31

題名:共生のイスラーム―ロシアの正教徒とムスリム (イスラームを知る)e0158454_21523317.jpg

著者:濱本 真実 (監修:NIHU(人間文化研究機構)プログラムイスラーム地域研究
出版年:2011年
出版社:山川出版社

イスラム教徒であるチェチェン人が19世紀後期から20世紀初めに
ロシア(あるいはソ連)から移住や虐殺された理由に、
土地の獲得以外にも、
チェチェン人がイスラム教を信仰しているからというのが大きかったと聞いたことがある。
また、現行のプーチン大統領政権下のロシア、チェチェン共和国ではイスラム教信仰が許されているが、
それは、「プーチンに逆らわない限り」という条件があるという。

著書のタイトル通り、「共生のイスラーム」は可能なのだろうか?
可能だとしたら、どのような状況だろうか?

そういった点を知りたいと思い、本書を手に取った。

著者の研究地域はヴォルガ・ウラル地方であり、チェチェン共和国がある北コーカサス地方は言及されていない。
時間軸も、その地方にイスラム教が伝わった時期から20世紀前半であり、
また、イスラム教徒が政治的権威を握っていたとき、キリスト教徒との関係はどうであったかという視点で論じてあり、
私の関心には直接、回答はなかった。

とはいえ、興味深いことがたくさん書かれていた。
例えば、
奴隷(恐らく捕虜?)の中には、形式だけとはいえイスラム教に改宗する人が増え、
当時のロシアが、奴隷を開放してもらうための借金返済金を支払って、奴隷に帰国してもらった。
名前は忘れたが、
フランスに留学したヴォルガ・ウラル地方の一民族出身のイスラム教徒の学者(活動家?)が、
ロシアと上手くつきあうために、教育制度を世俗的なものに変革し、
また、子どものうちからロシアに対して良いイメージをもつように、ロシア文学に触れるようにカリキュラムを組んだりした。
(ロシア語は難しいので、言語の勉強から始めずに、「好きになる」ことを優先した。)

118ページと短い。
しかし、中身が詰まっていて良書。
(これは、「共生」なのかな?と読みながらずっと考えたけれど。)


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# by sakonia73livre | 2018-04-24 21:52