題名:
人間不平等起原論・社会契約論
著者:Jean‐Jacques Rousseau (訳: 小林 善彦、 井上 幸治)
出版年:2005
出版社:中央公論新社
自然VS社会。
西洋思想の王道。
人類学の誕生以前であるから、
非西洋社会は「未開」であり、
そこに住む「未開人」は動物と変わりなく扱われる。
例えば…:
「人間の労働が、生きてゆくのに丁度必要なものしか
生産しない土地は、野蛮人に住まわせるべきである(p314)。」
証拠なしに想像で議論しても
とやかく言われないルソーの時代。
思想が伸び伸びしていて(?)清清しい。
いいなぁ。羨ましい。
上記の点以外は、彼の思想は未だに魅力的だ。
主題である、
「自然状態では人間は変わらない。
社会的諸条件が不平等を作る。
だからこそ、社会的に平等になる方法をとるべきだ」
は、今の世も、変わらず追求すべき重要な点だ。
(=私は、トゥクビルの不平等論派ではない。)
加えて、彼の「文明批判」も現代に通じる。
「…全ての偉大なもの、つまり技術、科学、法律が人々によって賢明にも発明されたのは、あたかも我々に予定されたこの世界が、ついにはその住民にとって狭過ぎるものとならないよう、種の過度の繁殖を防ぐための救いのペストのようなものなのだ、と(p163)。」
技術の高度化し産業が発達。その結果、環境破壊。
科学の発展が奇病を発見。その一方、別の奇病を生成。
「民主主義」を掲げた戦争、などなど。
救いのペスト…皮肉な結果だ。
私はルソーのファン。
(ジュネーブ滞在時は、彼の像を毎日のように拝んでしまったもの!)
彼の思想の美しさはもちろんのこと、
彼の考察から伝わってくる、
「ルソーは純真無垢、紳士だったのだろうなぁ」と
思われる雰囲気が好きだ。
念願の読書。
いたく、感動した。