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社会的包摂/排除の人類学―開発・難民・福祉

題名:社会的包摂/排除の人類学―開発・難民・福祉
著者:内藤 直樹 (編集), 山北 輝裕 (編集)

出版年:2014年
出版社:昭和堂社会的包摂/排除の人類学―開発・難民・福祉_e0158454_17153202.jpg

人々が包摂(あるいは統合)されるかのか、それとも排除されるのか。
新しい状況や立場を受容するのか、それとも挑戦するのか。
人類学における基本的かつ最も関心が高い問題だろう。

本書は開発、難民、福祉(精神障害、ハンセン病、ホームレス)の3つのテーマから
包摂と排除について、人類学的視点から論じる。

丁寧に調査し、分析し、論じると、
「両側面(包摂も排除も)がある」と結論づけられるのが(人類学的では)一般的。
多分に漏れず、本書もその結論に行きついていると言えよう。
(慣れていない人には歯切れ悪い印象をもつのだろうなっと思いながら読んだ。)

今回は、特に難民について興味をもって読んだ。
日本が認定した難民の数は驚愕するほど低い。
包摂よりも排除の力がかなり強いということ。
本書に、
2008年に試験的に始まった第三国定住の経緯が、
人道的というより国際協力の立場(負担の痛み分け)をとったとあり、納得。

これまでも、そして、これからも重要であり続けるだろう3つのテーマが
分かり易く説明されているし、
事例も興味深く、
「お薦め本」だと思う。

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以下、個人的にメモしておきたいものを記載。

久保忠行「第三国定住難民と私たちとの接点はどこにあるのか」pp100
じつは、タイには法律上、難民は「いないこと」になっている。タイでは移民法しかなく、難民を扱う法律はなく、難民は公的には避難民(displaced persons)とされる。この避難民は、タイに帰化することは許されず、潜在的な不法滞在者として扱われる。ただし人道上の理由から、戦禍を逃れてきた者や政治活動のため翻刻に帰還することができない者は、難民キャンプなどで居住することが許されている。こうした人々は公式に認可される難民というよりも「事実上の難民」といえよう。
「事実上の難民」のなかでも、第三国へ定住する権利を持つのは、2004年末~2005年初頭にかけて実施されたUNHCR/タイ内務省の避難民登録証をもつ者だけである。


有薗真代 2014 「脱施設化は真の解放を意味するのか」P229

新自由主義やポストフォーディズムは、官僚制やフォーディズム(=大量生産システム)のような「型にはまった」形式を退け、「融通の利く」「柔軟な」システムを追求する。フォーディズムは、商品を安く大量に生産することを可能にしたが、そこで生産される商品は画一的であり、雇用形態も生産ラインも硬直的であった。それに対してポストフォーディズムは、市場の要求にきめ細かく対応するために、雇用形態を短期化・流動化させ、労働者には消費者に合わせ得る臨機応変の態度を要請する。新自由主義とポストフォーディズムに共通する特徴は「フレキシビリティ(柔軟性)」を推進しようとする点にある(セネット1999)。



by sakonia73livre | 2017-10-06 18:11 | 人類学(Ethnography)