題名:あやつられる難民: 政府、国連、NGOのはざまで
著者:米川 正子
出版年:2017年
出版社:筑摩書房

難民保護を任務とする国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の元職員が、
現場での経験や知識に基づき、持論を展開する。
国際協力に憧れを抱く若者たちにはショックな内容だろう。

「リスケ」といった言葉の選び方に「雑さ」が目立ち、
内容も「暴露本」の域を出ず、
学問書あるいは研究書としては扱われない筈。
(3分の1程度を読んで挫折してしまった。)

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# by sakonia73livre | 2017-10-21 18:40 | 社会的知識

題名:ジェンダー人類学を読む―地域別・テーマ別基本文献レヴューe0158454_17145267.jpg
著者:宇田川 妙子(編)、中谷 文美(編)
出版年:2007年
出版社:世界思想社

ジェンダーに関する人類学の議論が、わかり易くまとめられているだけでなく、
日本の人類学者の研究成果(事例)も豊富に盛り込まれており、
英語で出版されているダイジェスト版(教材併用)よりも、
質が良いと思った。

この本が出版されたのは2007年。
ジェンダーに関する議論は、現在進行形であることもあり、
10年経った現在、特にトランスジェンダーに関する研究は目覚ましいものがあるだろうから、
この本の「更新版」が望まれる。



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# by sakonia73livre | 2017-10-19 17:16 | 人類学(Theory)

題名:社会的包摂/排除の人類学―開発・難民・福祉
著者:内藤 直樹 (編集), 山北 輝裕 (編集)

出版年:2014年
出版社:昭和堂e0158454_17153202.jpg

人々が包摂(あるいは統合)されるかのか、それとも排除されるのか。
新しい状況や立場を受容するのか、それとも挑戦するのか。
人類学における基本的かつ最も関心が高い問題だろう。

本書は開発、難民、福祉(精神障害、ハンセン病、ホームレス)の3つのテーマから
包摂と排除について、人類学的視点から論じる。

丁寧に調査し、分析し、論じると、
「両側面(包摂も排除も)がある」と結論づけられるのが(人類学的では)一般的。
多分に漏れず、本書もその結論に行きついていると言えよう。
(慣れていない人には歯切れ悪い印象をもつのだろうなっと思いながら読んだ。)

今回は、特に難民について興味をもって読んだ。
日本が認定した難民の数は驚愕するほど低い。
包摂よりも排除の力がかなり強いということ。
本書に、
2008年に試験的に始まった第三国定住の経緯が、
人道的というより国際協力の立場(負担の痛み分け)をとったとあり、納得。

これまでも、そして、これからも重要であり続けるだろう3つのテーマが
分かり易く説明されているし、
事例も興味深く、
「お薦め本」だと思う。

*********************
以下、個人的にメモしておきたいものを記載。

久保忠行「第三国定住難民と私たちとの接点はどこにあるのか」pp100
じつは、タイには法律上、難民は「いないこと」になっている。タイでは移民法しかなく、難民を扱う法律はなく、難民は公的には避難民(displaced persons)とされる。この避難民は、タイに帰化することは許されず、潜在的な不法滞在者として扱われる。ただし人道上の理由から、戦禍を逃れてきた者や政治活動のため翻刻に帰還することができない者は、難民キャンプなどで居住することが許されている。こうした人々は公式に認可される難民というよりも「事実上の難民」といえよう。
「事実上の難民」のなかでも、第三国へ定住する権利を持つのは、2004年末~2005年初頭にかけて実施されたUNHCR/タイ内務省の避難民登録証をもつ者だけである。


有薗真代 2014 「脱施設化は真の解放を意味するのか」P229

新自由主義やポストフォーディズムは、官僚制やフォーディズム(=大量生産システム)のような「型にはまった」形式を退け、「融通の利く」「柔軟な」システムを追求する。フォーディズムは、商品を安く大量に生産することを可能にしたが、そこで生産される商品は画一的であり、雇用形態も生産ラインも硬直的であった。それに対してポストフォーディズムは、市場の要求にきめ細かく対応するために、雇用形態を短期化・流動化させ、労働者には消費者に合わせ得る臨機応変の態度を要請する。新自由主義とポストフォーディズムに共通する特徴は「フレキシビリティ(柔軟性)」を推進しようとする点にある(セネット1999)。



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# by sakonia73livre | 2017-10-06 18:11 | 人類学(Ethnography)

A History of Anthropology

題名:A History of Anthropology
著者:ThomasHylland Eriksen + Finn Sivert Nielsen
出版年:2001年
出版社:Pluto Presse0158454_17022458.jpg


1年ぶりに仕事として人類学を扱うので、
基本をおさらいしておこうと手に取った本。

カギを握る人類学の理論や、
それらを提唱した人類学者について
明瞭に記載されている。

欲を言えば、
著者(Eriksen)が得意としているナショナリズムやグローバリゼーションについて
もう少しページを割いても良かったのではないかと思う。
(初版が2001年だから仕方がないか。)

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# by sakonia73livre | 2017-10-06 17:09 | 人類学(Theory)

題名:The Burning Forest: India's War in Bastar
著者:Nandini Sundar
出版年:Juggernaut
出版社:2016
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インドのChhattisgarh州に広がる森林地帯Basterに昔から住む
少数民族Adivasisが、
2005年頃から、
「『遅れている』少数民族を『開発』する」目的で、
「Naxalitesあるいは毛沢東主義(Maoist)から保護する」目的で、
州政府(や中央政府)により居住地から強制移住地に移された。

実際には、Adivasisの住む森林には
鉱山があり、また高値で売れる木々が生い茂っており、
「宝の山」だったからだ。

移住させられた者は、まだ幸せだったかもしれない。
Adivasisasisは、村を焼かれ、年齢構わず女性はレイプされ、
森林に逃げ遅れた人々は殺された。

強制移住、焼き討ち、レイプ、殺害には、
警察や特別警察官(Special Police Officers: SPOs)が行った。
SPOとは、新しく作られたもので、
Maoistに恨みをもつ者をはじめ、
Maoist共感者は殺害するぞと脅かし、
住民をSPOに仕立て上げた。
(無職の若者が多いビハール州やUP州からもSPOが募られた。)

大量殺人が起こったわけだが、
人々の知るところになるには時間がかかった。
その理由は、
僻地にあること、そのためメディアの駐在もいなければ出張もままならないこと、
大手メディアの出資者が鉱山にも投資していること、
地元ジャーナリストがいないこと、
AdivasisはMaoistと同一視する(させる)ポリティクスが動いているので、
人々の共感を呼ばないことなどが挙げられている。

著者はインド人人類学者。
詳細な調査をする一方、仲間の学者や弁護士とチームを作り、
強制移住地の廃止、殺害者家族への補償などを、
州政府を相手に裁判を起こす。
数年かけて、勝訴に持ち込む。
しかし。
最高裁判所の命令であっても、州政府は従わない。
本が出版された2016年も、
Adivasisは何の補償もされず、レイプや殺害が続いているという。

なんてこった。
2005年からそんなことが起きていたなんて。
2004年まで2年間弱インドにいたし、2009年にもインドに2カ月行っていたのに、
私は全く知らなかった。
(「Basterの出来事、知っている?と現在滞在しているインドの某都市の人たちに質問したら、
「あー、あれねー」と知っている人は知っている、けれど、知らない人は知らない様子。)

っと、かなり衝撃的な事実を追った本。
前半は、緻密に文献や政府の記録を洗い、また著者が足繫く通った現地調査からなる描写的ナラティブ、
後半は、メディア、プロパガンダ合戦、人々の関心と無関心、無責任(むしろ利己主義)な政府、裁判でまとめらている。
内容が濃く、また悲惨なので、読み進めるのが辛いのだが、
著者の感情に走ることなく、クリティカル・シンキングで緻密に出来事を追うので分かり易く、
また、文章自体がリズム感が良く美しいので、
グイグイと引き込まれて、あっという間に読めた。

(最近、睡魔に襲われて碌に読書ができなかったのに!この本は別格という証拠。)

Adivasisの事実がインド国内はもとより、世界に知られていない(はず)。
彼らの過酷な状況は現在進行形である。
http://www.indiatimes.com/news/india/beyond-rape-and-torture-of-adivasis-in-chattisgarh-suspended-cop-s-facebook-post-reveals-more-horror-stories-321252.html

もっと様々な人が知ってほしい。
インド政府が駄目なんだから国際社会が何とかしないと。

加えて、
私の周りはどうなのだろう?と少々調べてみたら、
「村が燃やされた」という出来事は、それほど珍しくないようだ。
(焼かれないとしても、強制移住は良く聞く話。)
現政権下、「開発」が叫ばれる中、「闇」の部分も「開発」中なのは間違いない。

インドだけではない。
世界中、至るところ、新自由主義が横行しているところで発生している出来事。
この本から学び、身の回りに目を向けると、「あ、ここでも!」となるはず。

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# by sakonia73livre | 2017-07-30 02:35 | 人類学(Ethnography)